【瀋陽時事】中国政府は16、17の両日、北京などに駐在する外国メディア記者を対象に、日本のかいらい国家だった満州国(1932~45年)があった遼寧省で、抗日戦争記念館など計5カ所を案内するプレスツアーを実施した。安倍晋三首相の靖国神社参拝を受け、中国政府内で「日本軍国主義復活を断固抑えるべきだ」(専門家)との声が高まる中、旧日本軍の残虐行為を宣伝・強調し、外国メディアが中国の主張を支持するよう「世論戦」を有利に進めたい思惑があるとみられる。
 企画したのは、外務省の外国メディア担当部局と遼寧省外事弁公室で、外国メディア40人近くが参加。31年、満州事変の発端となった柳条湖事件を記念した「九・一八歴史博物館」(瀋陽市)関係者は「一挙にこれだけ多数の外国人記者が参観するのは初めて」と歓迎しつつ、突如決まったプレスツアーのタイミングに関し「安倍首相の靖国参拝とは直接関係ない」と釈明した。「(安倍首相にも)参観してもらいたい」とも述べた。
 ツアーに参加したのは、中国と同様に靖国参拝に反発する韓国の記者が16人と最も多く、続いて日本メディアに属する15人前後。残りは欧州、インドなどのメディア。欧州メディアなどは「(ツアー開催は)日中関係の悪化と関係している」とみているのに対し、韓国人記者は「日本軍国主義の歴史に関心は高い」と話していた。
 記者団は、旧日本軍による米英軍など兵士の捕虜収容所跡地(瀋陽市)を取材。2013年5月に開館した陳列館の建物には「なぜ日本人はこんなに人情がなく残酷なのか考えたのは一度だけではない」という米国人の元捕虜の言葉が中国語と英語で刻まれていた。
 また、遼寧省档案館(史料館)の趙煥林館長は、旧日本軍による1937年の南京事件に関する同館所蔵史料を公表し、虐殺を裏付けるものだと強調。記者からは「なぜこの時期に外国メディアに出すのか」と質問が出た。
 一方、32年に旧日本軍が多数の村民を殺害したとされる平頂山事件の記念館(遼寧省撫順市)では周学良館長が「(事件を)日本の人民に宣伝してほしい。被害者人民に賠償、謝罪などがあって中日関係は安定かつ健全に発展できる」と訴えた。 


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